たまご、手、近傍/テンポラリー・オブジェクツ
Eggs, hands and vicinity / Temporary objects
2018
printed images, dairy objects
《たまご、手、近傍》について
たまごと手の4つの関係をつくる。それぞれの関係について、たまごー手をスタートに、物体ー手、物体ー物体へと、徐々に置き換える。最終的に、物体と物体のあいだにも「たまごを持つように持つ」関係性が成立する。
「物体がダンスする」という以前より続く思考から発展して、身振りから「人がいなくなる」こと、そして身振りを物体に渡すことが可能かどうか、考えていた。身振りとは身体の動きそのもので、身体と不可分なものである。しかしそれが人の体である必要はないかもしれない。
たまごを起点にしたのは、持ちにくく、手と接触している時間がとても少ない物体だと感じたからだ。液体を割れやすい殻の内部にたたえ、すべすべの表面を持つたまごを、手はとても注意深く扱う。そして、その手で箸やホースを持ってみる。実感を手のひらに残したまま、物体と物体を組み合わせる。「たまごを持つ」ことの実感は徐々に手から物体へとスライドされ、それぞれの物体が持つ重心や弾性を軸に、身振りが少しずつ変奏されていく。
《テンポラリー・オブジェクツ》について
《たまご、手、近傍》を再制作したインスタレーション。まず、PC上で同作の写真をコラージュする。同じ物体を、なるべく同じ向き・サイズで重ねて組み合わせていく。次に、コラージュを実際の物体でやってみる。このとき、物体には重力がかかって落下したり、うまく繋げられなかったりする部分が出てくる。できるところまでやってみて、その状態を写真に撮る。次は、一旦完成した物体のコラージュをもとに、写真のコラージュを行う。これを何回か繰り返し、最終的にコラージュと物体(のコラージュ)が一致する。
《たまご、手、近傍》の制作を経て、次は物体における身振りとイメージの関係が気になった。この作品は、実際にその場で組み立てられ、インストールされた。illustlator上で画像を回転・拡大・縮小するように紐で物体を吊り下げ、クランプとクランプを噛み合わせ、何度も崩壊させながら物体の重心を取る。TouchPad上の指の動きは身体的な動きに還元され、ペラペラの画像は重力を伴い、落下する力を押し戻す力を加えられることで、空間に出現する。