ニュー・フィジカル・フィットネス・テスト

New physical fitness test

2018
single channel video (7′ 08″) , printed matter, dairy objects
performer: Saki Nakano, May Shirao

──文部科学省では、昭和39年以来、「体力・運動能力調査」を実施して、国民の体力・運動能力の現状を明らかにし、体育・スポーツ活動の指導と、行政上の基礎資料として広く活用しています。(文部科学省ウェブサイトより)

新体力テスト7種目
握力/上体起こし/長座体前屈/反復横とび/持久走または20mシャトルラン/50m走/立ち幅とび/ハンドボール投げ

 誰しも小学校、中学校、高校で一度は経験したことのある「体力テスト(スポーツテスト)」。スポーツテストは上記の7種目から成る。それぞれの結果ごとに点数がつけられ、最終的にA~Eのランクで生徒の体力が評価される。

 《ニュー・フィジカル・フィットネス・テスト》は、このスポーツテストをモチーフとした作品。
・それぞれの動きを解体し、日用品と2人の人間の関係に置き換えて行った7種目の映像
・映像で使ったオブジェクトを構成したインスタレーション
・文部科学省がウェブ上で公開している「新体力テスト実施要項」の一部を修正テープで消し、映像の内容に無理やり合わせたルールブックとしてのテキスト
からなる。

 スポーツテストはそれ自体、ばかばかしいものだと感じた。運動が苦手だった私自身にとって嫌な思い出であるし、周囲に聞いてみても皆良い印象を持っていなかった。そこで私は、日用品を用いてそれぞれの種目の運動を解体しつつ、徹底的にナンセンスな「ニュー・フィジカル・フィットネス・テスト」を試みた。

 2人の人間が無表情に、謎に定められたルールに動かされ、ときに体に負荷をかけながら「種目」を遂行する映像。鑑賞者はそれを見ながら、実際に会場に置かれたヒューマンスケールの日用品群のなかを行き来する。日用品はその弾性や硬さ、空気の摩擦を伴って、普段の用途から離れ、人の体に対する重圧として働く。誰が・なんのために定めたのか分からない規定の数々、その意味不明さが、違う仕方でコピーされる。壁に貼られたテキストは、「もっともらしい」言葉で書かれながら、文の一部を消去され、ほとんど何も言っていないような(指が外側になる/音に間に合い、継続することができる/最大に屈したあとに離すなど)ルールブックとして機能する。「ナンセンスな仕組みを否定する」という構造を借り、ある意味で純粋な人とものとの関係を振り付ける。

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